認知症で人格が崩れる…家族が陥る誤解とは?

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認知症の世界を知る 

混乱や恐怖の日常、

ダメージが蓄積

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2025/08/04 05:00

日経速報ニュース

認知症の世界を知る 混乱や恐怖の日常、ダメージが蓄積 - 日本経済新聞
長寿の国の日本は認知症大国でもある。2040年には高齢者の15%にあたる584万人が患うとの見通しだ。社会がこの厄介な病と共に歩むには、当事者の目の前に現れる不思議な世界に、家族だけでなく国民皆が思いをはせて理解を深めなければならない。4年...

【この記事の内容】

認知症の人が見ている“現実の崩壊”とは?

はじめに

認知症の人が生きる「もうひとつの日常」とは?

認知症の方にとって、日常の風景は突然、まったく違ったものに見えることがあります。

次のような事例がよく知られています。

・出入口の黒いマットが「落とし穴」に見えてしまい、怖くて通れない

・鏡の中の自分を「知らない人」と認識してしまい、怯えてしまう

・公共トイレの構造が理解できず、どこに排泄すればよいかわからない

こうした“感覚のズレ”が毎日繰り返されると、当事者は慢性的な不安と混乱にさらされ、次第に心にダメージが蓄積されていきます。

『顔無し族の村』と『サッカク砂漠』が教えてくれること

認知症世界の歩き方』という書籍では、認知症当事者の体験を旅行記のように描いています。

たとえば、

・顔無し族の村では、他人の顔を識別できなくなる不安と孤立

・サッカク砂漠では、現実が信じられなくなるほどの錯覚と混乱

このような表現は、認知症が「感覚の崩壊」と深く関係していることを、私たちに視覚的かつ感情的に伝えてくれます。

自分の目や耳が信じられなくなると、人は他者との関係性までも失ってしまうのです。

介護者がすべきこと

「現実よりも信頼」を大切に

認知症ケアで最も大切なのは、「相手の世界を否定しない」ことです。

認知症の人が見る現実に寄り添うことが、混乱を和らげる第一歩となります。

たとえば、以下のような接し方が効果的です。

・「違います」と否定するのではなく、「そうなんですね」と受け止める

・「〇〇ですよ」と断定せず、「もしかするとこちらかもしれませんね」と柔らかく導く

・トイレや廊下など、混乱しやすい場所は視覚的な工夫を凝らす

これは、まるで異国の文化を旅する通訳のように、相手の世界を理解しながら“翻訳”する役割に似ています。

高齢者本人の視点

「自分が壊れていく」不安と恐怖

認知症の初期段階では、自分の異変に気づいていることが多く、本人は深い不安の中にいます。

・名前が出てこない

・時間の感覚が狂う

・大切な物を失くしてしまう

こうした“小さなできない”が積み重なると、「私はおかしくなったのでは?」という恐怖に襲われ、自信を失っていきます。

その結果、

・周囲に迷惑をかけたくないという気持ちから孤立

・間違いを責められると萎縮し、自己否定に陥る

・信頼していた家族でさえ疑ってしまう

この状態を「わがまま」「頑固」と受け取ってしまうと、関係はさらに悪化します。

背景にあるのは、“自分が崩れていく”という強い葛藤なのです。

家族の視点

理解したいのに、できない苦しみ

認知症の家族を支えることは、精神的にも体力的にも大きな負担を伴います。

・名前を忘れられたときのショック

・同じ話の繰り返しに対する苛立ち

・暴言を受けたときの傷つき

最初は「なんとか理解したい」という思いでも、介護が長期化するにつれ、疲労と罪悪感が積み重なっていきます。

家族の負担は、次のような形で現れます。

・感情的にぶつかってしまう自己嫌悪

・仕事を辞めざるを得ない経済的負担

・周囲に相談できない孤独感

家族もまた、認知症の“別世界”に引き込まれ、出口が見えなくなっているのです。

地域の役割

「家庭の中だけ」で完結させない社会づくり

2040年には高齢者の約15%が認知症になると予測されています。

これは、もはや一家庭の問題ではありません。

社会全体で支える仕組みが必要です。

たとえば、以下のような取り組みが考えられます。

・地域の認知症サポーター育成

・店舗やバスの運転手などが声をかけるトレーニング

・GPS付きの靴や見守りシステムの普及

・地域包括支援センターとの情報共有と連携

こうした支援は、認知症当事者にとって「自分の世界を受け入れてくれる安心な場所」が広がることを意味します。

治療と予防の現実

今できるのは“進行の遅延”

アルツハイマー型認知症では、レカネマブ(商品名:レケンビ)という薬が登場し、初期段階での症状進行を遅らせる可能性が出てきました。

しかしこの薬には限界があります。

・効果が見込めるのは、初期または前段階の「軽度認知障害」のみ

・脳の萎縮が進んでいる場合は対象外

つまり、治療よりも早期発見と生活習慣による予防の方が現実的で重要なのです。

偏見と向き合う

認知症になりたくない」の裏にある誤解

認知症は、人格や記憶に関わる病気であるため、「絶対にそうなりたくない」と思う人が多くいます。

それが知らず知らずのうちに、認知症の人への差別や偏見につながっていきます。

たとえば、

・「迷惑をかける存在」という誤解

・病気であるにもかかわらず「怠け」や「だらしなさ」と受け取られる

・本人が症状を隠そうとし、支援が遅れる

これを断ち切るには、正しい理解と、接し方の教育が必要です。

結論

その世界を“異質”ではなく“未来”として受け止める

認知症とは、本人にも周囲にも「現実が揺らぐ」体験をもたらします。

しかしそれは、誰にでも起こりうる“未来”の風景です。

だからこそ、次のような姿勢が求められます。

・介護者は、現実よりも「信頼」に重きを置いて対応する

・家族は、自分を責めすぎず、周囲とつながる勇気を持つ

・地域は、認知症を特別扱いせず、「共に生きる存在」として受け入れる

認知症の“もうひとつの世界”を理解することは、未来の自分を守ることでもあります。

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