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フォーマルダンスと伝統ダンスが、
高齢者の認知機能や抑うつを改善
2025/07/31 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『抑うつ状態の高齢者に起きた変化。薬に頼らないケアがもたらす意外な結果とは?』
はじめに
介護の現場では近年、「非薬物的介入」という考え方が重要視されています。
これは薬を使わず、人が本来持つ力や感情、身体の動きを活かしてケアする方法です。
たとえば音楽療法、園芸療法、回想法、そして今回紹介するダンスによる介入もこれに当たります。
例えるなら、薬が「一時的に痛みを止めるスイッチ」だとすれば、非薬物的介入は「体質そのものを改善する生活習慣の見直し」と言えます。
今、ダンスは単なるレクリエーションを超えて、高齢者の認知機能や抑うつ状態を改善する手段として科学的にも注目されています。
なぜダンスが脳と心に良いのか?
◆結論
ダンスは、脳と心を同時に刺激する複合的な活動であり、高齢者の生活の質向上に寄与します。
◆理由
ダンスには、以下のような「身体・認知・感情」すべてを動かす要素があります。
・音楽に合わせて動くことで記憶力を使う
・ステップを覚えて実行機能(行動のコントロール)を刺激する
・相手と踊ることで社会的コミュニケーションが生まれる
・成功体験が自己肯定感を生み、抑うつ感情の軽減につながる
まるで「総合的な脳のジム」とも言えるのが、ダンスという活動なのです。
事例
ダンスで記憶の低下が緩やかに
日本国内の研究では、軽度認知障害を持つ高齢者が40週間、週に1回60分の社交ダンスを行った結果、記憶や認知機能の低下が明らかに緩やかになったことが報告されています。
このことから、専門的な設備や過度な運動を必要としない活動でも、一定の認知的改善が得られることが示唆されています。
高齢者が「ダンスを受け入れやすい」
心理的背景
高齢者は年齢とともに、「できないことが増える」ことに強いストレスや寂しさを感じます。
特に、認知機能の低下や身体の衰えは自己否定感につながりやすく、これが抑うつ状態を引き起こす要因にもなります。
しかしダンスには、以下のような心理的メリットがあります。
・若い頃のダンスを思い出す「懐かしさ」
・誰かと踊る「人とのつながり」
・身体を動かすことで得られる「達成感」
・笑顔を交わすことによる「社会的な役割の回復」
これらは、高齢者が持つ心の「空白」を自然に埋めてくれるため、抵抗感なく取り組める可能性が高いのです。
【視点別】ダンス介入を導入する際の課題と解決策
介護者視点
リソース不足と工夫の余地
課題
・スタッフの時間と人手が限られている
・ダンスに適したスペースや設備が不足
解決策
・外部講師やボランティアとの連携
・音楽に合わせて行う「椅子に座ったダンス」など省スペースな工夫
・レクリエーション担当職員のスキルアップ支援
高齢者視点
恥ずかしさと「歳だから」の自己制限
課題
・動くことに対する不安や抵抗感
・「自分にはもう無理だ」と思い込んでしまう
解決策
・初心者向けの簡単な振り付けからスタート
・昭和の音楽や懐かしいメロディを使用し「思い出の再生」を促す
・成功体験を積み重ね、自己効力感を育てるプログラム設計
家族視点
継続できるのかという不安
課題
・モチベーションが続くのか心配
・効果が見えにくい
解決策
・家族も参加できるイベント型の取り組み(例:ダンス発表会)
・活動前後での簡易的なアンケートや記録で効果を「見える化」
地域視点
場所・人材・格差の課題
課題
・ダンスができる施設の不足
・地域によって活動内容にばらつきがある
解決策
・公民館や地域施設の有効活用
・地域住民や学校、NPOと連携した多世代型プログラム
現場で起きている介護の最新動向
介護業界では、以下のような潮流が起きています。
・転倒・認知症予防を目的とした「フレイル対策」が拡大
・薬に頼らない「非薬物的ケア」の導入が加速
・多世代交流を軸とした「地域包括ケア」構想の実践
・介護人材不足を補うためのICTやレクリエーション支援者の活用
この中で、「ダンス」という活動は身体機能・認知機能・社会性を一度に育てる新しいケア手法として、大きな期待を集めています。
まとめ
小さくても確実な前進をもたらすダンス
高齢者へのダンス介入は、効果としては「小さな変化」かもしれません。
しかしその変化は、高齢者が自分自身を肯定し、社会と再びつながるきっかけになります。
「できなくなった」ことではなく、「まだできる」ことに目を向ける。
ダンスは、そんな視点を高齢者に取り戻させる文化的な処方箋なのです。
介護者や家族、地域が一丸となって、ダンスという「生きがいの再発見」を支えること。
それが、これからの高齢者ケアに求められる新たなアプローチになるでしょう。



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