このままでは危険?ゲーム型リハビリが介護を壊す落とし穴とは

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ゲームの力でリハビリ効果UP 

セガXD、順天堂とツール開発

2025/12/20 02:00

日経速報ニュース

ゲームの力でリハビリ効果UP セガXD、順天堂とツール開発 - 日本経済新聞
ゲーム開発のセガエックスディー(セガXD、東京・新宿)は学校法人の順天堂と組み、医療分野で共同研究する。ゲームの力を非ゲーム分野に生かす「ゲーミフィケーション」の知見を駆使し、2027年をメドに患者のリハビリテーションに対する意欲を高めたり...

【この記事の内容】

なぜ通常リハビリより効果が出ない?ゲーム介護リハビリの誤解とは

はじめに

介護分野では「続けられること」こそが最大のリハビリ効果だという考え方があります

介護の現場では、リハビリの成果は「どれだけ正しい方法か」よりも、「どれだけ続けられたか」によって大きく左右されます。

介護者の立場から見ると、高齢者にゲームを活用したリハビリを取り入れた場合、意欲や継続性が高まる傾向は明確に見られます。

一方で、現時点では、筋力や身体機能といった数値的な効果が、従来のリハビリを大きく上回ると断言できる段階にはありません。

しかし、これはゲーム型リハビリの限界を示しているのではなく、「設計の途中段階」であると捉える方が現実的です。

医療や介護の専門性を踏まえて設計されたゲーミフィケーション型リハビリであれば、結果的に通常のリハビリ以上の効果につながる可能性は十分にあると考えられます。

介護現場におけるリハビリの本質とは何か

介護分野におけるリハビリの本質は、「正しい運動を行うこと」ではなく、「本人が主体的に取り組み、それを継続できること」にあります。

どれほど医学的に優れたプログラムであっても、高齢者本人が前向きに取り組まなければ、期待される効果は得られません。

実際の介護現場では、多くの高齢者が次のような思いを抱えています。

痛みや疲れへの不安、「やらされている」という感覚、そして努力しても成果が見えにくいことへの諦めです。

これらが積み重なることで、リハビリ自体を避ける行動につながっていきます。

介護者の実感として、通常のリハビリでは実施率が6〜7割程度にとどまることが多く、指示を待つ受け身の姿勢も目立ちます。

一方で、ゲーム要素を取り入れると、実施率が8〜9割に上がり、自ら声を出したり笑顔が増えたりする場面が多く見られます。

この差は、現場で関わる介護者にとって非常に大きな意味を持ちます。

なぜゲームは高齢者のリハビリ意欲を高めるのか

ゲームが持つ最大の強みは、「やらなければならないリハビリ」を「やってみたい体験」に変える点にあります。

介護分野ではよく、「訓練は生活の中に溶け込ませてこそ意味がある」と言われます。

これは、行動を無理に強制するのではなく、自然に習慣化させることの重要性を示しています。

この考え方は、ビジネス転用における考察で言えば、営業成績を単なるノルマ管理ではなく、進捗が可視化され達成感を得られる仕組みに変えることに似ています。

ゲームでは、点数やレベルアップ、キャラクターといった要素によって、自分の努力が目に見える形で示されます。

その結果、「できた」「前より良くなった」という実感が生まれます。

これらはすべて、人が本能的に持つ「達成したい」「認められたい」という欲求に働きかける仕組みです。

高齢者にとっても例外ではなく、むしろ成功体験が少なくなりがちな時期だからこそ、その効果は大きくなります。

それでも効果面で通常のリハビリを超えにくい理由

既存のゲーム型リハビリが、身体機能の改善という点で通常のリハビリを明確に上回らなかった背景には、「設計思想」の違いがあります。

多くのゲームは本来、楽しむことを目的に作られており、医学的に最適な負荷量や動作の正確性までは考慮されていません。

また、疾患や身体状況に応じた個別対応が難しい点も課題です。

その結果、意欲は高まっても、筋力改善などの数値では、通常のリハビリと大きな差が出にくい状況が生まれています。

これは、ゲームが無意味なのではなく、「医療・介護の視点が十分に組み込まれていない」ことが原因だと言えます。

医療とゲームが組み合わさることで生まれる可能性

医師や理学療法士などの専門職が開発段階から関わることで、ゲーム型リハビリは「楽しいだけのツール」から「効果を生む仕組み」へと進化します。

高齢者は、「失敗したくない」「人に迷惑をかけたくない」という気持ちと同時に、「本当は良くなりたい」という本音を抱えています。

ゲームは、この矛盾した感情をやわらかく包み込み、前向きな行動へと導きます。

例えば、リハビリの頻度が週2回から4回に増えたり、自宅での自主訓練が自然に習慣化されたりすることで、結果的に継続期間が倍以上になることも期待できます。

継続そのものが効果を生む土台となるのです。

視点別に見る課題と対応の方向性

介護者にとっては、声かけや拒否対応の負担が大きな課題です。

ゲームが動機付けを担うことで、介護者は安全管理や個別支援に集中しやすくなります。

高齢者にとっては、失敗体験の積み重ねや自尊心の低下が壁になりますが、ゲームは「他人との比較」ではなく「過去の自分との比較」を促し、成功体験を積みやすくします。

家族にとっては、本当に効果があるのか分からない不安がありますが、成果が見える形で共有されることで安心感につながります。

地域全体では、人材不足やリハビリ提供量の限界という課題がありますが、自宅や地域で取り組める仕組みが整えば、介護予防にも活用できます。

介護福祉領域で起こっている変化

現在の介護福祉領域では、デジタル技術の導入、生活リハビリへの転換、楽しさを重視した介護予防の取り組み、成果の可視化へのニーズが高まっています。

これらの動きはすべて、ゲーミフィケーションと非常に相性が良く、今後の発展を後押しする要素と言えるでしょう。

まとめ

ゲーム型リハビリは効果を生み出す「土台」になる

介護者としての結論は明確です。

短期的な数値だけを見れば、ゲーム型リハビリは通常のリハビリと大きな差がないかもしれません。

しかし、意欲、継続性、自己効力感を高める力は明らかに優れています。

その結果、中長期的には通常のリハビリ以上の成果につながる可能性が高まります。

ゲームの力は魔法ではありませんが、「続かないリハビリ」という介護現場最大の課題に対する、極めて現実的な解決策の一つであることは間違いありません。

医療と介護、そしてゲームが本格的に融合したとき、高齢者リハビリの常識は大きく変わっていくでしょう。

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