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もしもに備え、
終活情報を自治体に登録
遺言の場所や緊急連絡先
多死国家のリアル
2025/08/12 05:00
日経速報ニュース

【この記事の内容】
『2050年には1,083万世帯が“ひとりきりの老後”に突入とは?』
はじめに
介護の現場では、人生の「最後をどう迎えるか」を支援する考え方が年々重要になっています。
これは「終活」と呼ばれ、本人の希望に沿った生き方と、最期の迎え方を準備する取り組みです。
最近では、高齢者の終活情報を自治体に登録する制度が広がっており、介護の現場にも変化が生まれています。
この制度は、特に身寄りのない高齢者が、もしものときに備えて自らの希望を事前に登録することで、死後の混乱を防ぎ、尊厳ある最期を迎えるための支えとなります。
企業に例えるならば、この制度は「リスクマネジメント」の一種です。
想定される最悪のシナリオに対し、情報を共有し、関係者が混乱しないよう事前に準備するという点で、BCP(事業継続計画)にも似ています。人生にも、万一に備える計画が求められているのです。
なぜ今、終活情報登録が必要なのか?
今、終活情報の登録が必要とされている背景には、以下のような社会的課題があります。
・一人暮らしの高齢者が増えている
→ 2020年時点で671万世帯、2050年には1,083万世帯に増加予測。
・孤立死の増加
→ 2024年には65歳以上の約5万8千人が、自宅で一人きりで亡くなっています。
・家族や支援者がいないケースが増えている
→ 生前の意思を伝える相手がいない、支援の手が届かない実態。
・これらの問題に対し、終活情報登録制度は「社会的なセーフティネット」として機能します。
個人の想いを見える形で残すことで、周囲の支援者や行政が“迷わず動ける環境”を整えるのです。
終活情報登録制度とは?
終活情報登録制度とは、高齢者が自身の意思や希望を自治体にあらかじめ登録しておく制度です。
登録できる内容の一例は以下の通りです。
・緊急連絡先(相手の同意が必要)
・遺言書やエンディングノートの保管場所・葬儀や遺品整理の依頼先
・お墓の場所・医療・介護に関する希望
たとえば静岡市では、希望者が市の窓口で申請し、最大16項目の情報を登録できます。
完了後は、情報を記載した登録カードを本人が携帯し、登録証を玄関などに掲示します。
いざという時には、病院や警察などがこの情報を元に迅速に対応できます。

高齢者視点
終活登録は「安心」の土台になる
「自分が突然死んだら、残された家族はどうなるのか」。
高齢者の多くが、こうした不安を抱えています。
特に、介護が必要な家族と暮らしている場合、この不安はより深刻です。
たとえば、障がいのある子どもと2人で暮らす高齢者は、自分に万一があった後の生活設計まで気を配らねばなりません。
終活情報を登録することは、未来への備えと、心の安定をもたらします。
それはまるで、「将来の不確実性に備える保険」をかけるようなもの。
自分の意思を形にすることで、不安が整理され、前向きな生活を取り戻すきっかけになるのです。
介護者視点
「情報があること」が対応の鍵になる
介護現場では、利用者が急に入院したり亡くなったりする場面にしばしば直面します。
その際、「誰に連絡を取るべきか」「本人はどんな医療を望んでいたか」などの情報がないと、現場は混乱します。
しかし、終活情報が登録されていれば、
・適切な連絡先にすぐに連絡ができる
・遺言や希望に基づいた対応ができる
・葬儀や納骨の準備がスムーズに進む
といった支援が可能になります。
これはまさに「マニュアルのある接客」に近い状況です。
混乱の中でも対応に迷いがなく、関係者全員が安心して動けます。
家族視点
遠くにいても想いを引き継げる
遠方に住む家族や、連絡が途絶えている親族にとっても、終活情報の登録は大きな手がかりになります。
本人が何を望んでいたのか、何を誰に託したかったのか。
そうした情報があるだけで、残された家族が「自分の判断は間違っていない」と感じることができます。
これは「先に出された遺言が、後の混乱を防ぐ設計図になる」ことを意味します。
家族の心の整理にもつながる、大切なツールです。
地域視点
孤立死と行政コストの削減に寄与する
地域にとっても、この制度の導入は大きなメリットがあります。
現在、孤立死が増えることで、
・行政が親族探しに追われる
・遺品整理や葬儀の準備が進まない
・引き取り手のない遺骨が発生する
などの課題が深刻化しています。
しかし、終活情報があらかじめ登録されていれば、連絡や手続きがスムーズになり、自治体の負担も大幅に軽減されます。
これは「地域運営におけるトラブルの予防策」であり、住民の命と生活を守るための仕組みともいえるでしょう。

制度の課題と今後の展望
一方で、制度にはいくつかの課題も存在します。
・普及率がまだ低く、導入自治体は全国の1%程度
・高齢者本人・家族ともに制度自体を知らない
・緊急連絡先の確保が困難な場合が多い今後は、
・国による制度ガイドラインの整備
・自治体主導の説明会や講座の実施
・NPOや民間団体との連携強化
といったアプローチで、制度の浸透を図っていく必要があります。
介護福祉の現場で起きていること
介護現場で以下のような現象が起こることがあります。
・家族がいない、または疎遠な高齢者の増加(=看取り難民の増加)
・本人の意思を反映したケア計画(ACP)が求められるように
・身元保証の外部委託が一般化
・最期を支える“つながり”が重要に
介護職員からはこんな声が聞かれます。
・「入居者が亡くなっても、誰に連絡すればいいか分からない」
・「火葬後に家族が現れて、クレームになることがある」
・こうした混乱を減らすためにも、終活情報の共有は極めて重要です。
結論
介護者としての役割は「もしも」に備える支援者であること
終活情報登録制度は、高齢者本人だけでなく、介護者、家族、地域にとっても大きな支えとなります。
この制度の価値は、「最期に向けた不安を見える化し、周囲が支え合える環境を整えること」にあります。
私たち介護者にできることは、高齢者の不安に寄り添い、制度の利用を共に考え、共に準備していくことです。
終活とは、死への準備ではなく、「最期まで生き切るための準備」です。
一人ひとりが“その人らしい最期”を迎えられる社会を、支援と連携の力で築いていきましょう。



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